「MLインフルエンザ流行前線情報データーベース(以下 ML-flu-DB)」とは、Ped-ftやJPMLCなどの小児科医が多く参加するメーリングリスト(以下 ML)で有志を募り、迅速診断検査によるインフルエンザの診断を、自主的にインターネット上のデータベース(以下 Web-DB)に報告し、国内・各地の流行状況を迅速に周知するプロジェクトです。2000年冬季から運営しております。
本システムで公表されるデーターは、MLに参加している有志医師から自主的に報告された症例を自動集計したものです。けっして公的な組織や団体からのコメントや集計報告ではありません。その特徴を承知したうえで、閲覧可能な情報をご自身の責任においてお役立て下さい。
本プロジェクトの発案は砂川富正先生(国立感染症研究所感染症情報センター)による前述のMLで提案されたものです。その提案に基づいてWeb-DBの設計と提供を当サイト管理者(西藤なるを)が行いました。本プロジェクトのお問い合わせは、管理者の負担を減らすためになるべく参加されている各MLで質問して下さい。しかし、システムの異常や操作上の不具合は、このサイト管理者に遠慮なくお問い合わせ下さい。
有志医師から提供された情報が、皆さんのお役に立つことを願っております。
■ 本プロジェクトの背景
感染症法に基づくサーベイランスの報告は、情報還元までに約2週間を要しています。感染症の流行阻止には早期の対策が重要であり、特にインフルエンザ(flu)のように流行の早い感染症では、収集された情報の還元にさらなる速報性が診療現場から望まれています。
インターネット(INET)が普及し、MLなどに参加する医療関係者は増えました。MLを通じて診療の様子やヒントなどの情報交換を行うことは日常的となりました。その交信の中で、fluの発生に関する投稿も目にします。そこで、MLでfluの診断状況などを報告し合えば、国内の流行状況を迅速に知る事ができるのではないかと、砂川富正先生(国立感染症研究所感染症情報センター)から前述のMLに提案がありました。その提案に賛同された先生方は、自主的にfluの診断状況・外来受診状況をMLに投稿するようになりました。
特に報告は、厚労省のサーベイランスでは、臨床診断であったのに対して、砂川先生の提案は当時普及し始めたインフルエンザの迅速診断を行った症例の報告でした。これにより、確かなfluの検出状況をML参加者は共有することができました。
そうした投稿ツリーを読んでいたサイト管理者(西藤なるを)は、インターネット上のDB(Web-DB)を準備して、自動集計する運用を提案しました。それが、このML-flu-DBの発端です。今はいろいろな機能が備わったWebサイトとなりましたが、当時は簡単なWeb-DBシステムでした。
当初から日本地図をテーブルのタグを使って描き、報告数に応じて背景色の色を変えて、国内流行を分かりやすく表示しておりました。振り返るとこの表示方法が、有志の先生がたに好評だったのではないかと思っております。
■ 本DBの情報収集方法について … 【必ずお読み下さい】
Ped-ft, JPMLCなどの小児科医が多く参加するMLに参加者に、本DBの存在と目的、そして登録方法を紹介し、その意義を理解できた先生方からの自主的な報告をお願いしております。また、地域で有志の先生を募り、当地の流行状況を知らせ合いたいと、MLにも参加されていないけれども登録に協力していてくださる先生もおられます(代表は前述のいずれかのMLに参加されています)。人口に応じて一定の有志医師を配置したり、報告の義務などは設けておりません。
特定の地域に熱心な先生がいたり、逆関心のある先生がいない地域の存在は予想されます。時間が空いているときは症例登録が可能ですが、忙しくなってくると登録ができなくなる可能性もあります。つまり本DBが表示する流行状況は、実際の流行を必ずしも正しく示しているとは言えません。
しかし、インターネットは普及し誰でも容易に報告が可能となり、MLでプロジェクトの開始を伝えると毎年全県から有志の医師が自主的な報告をして下さいます。調べてみると国内の発生数で比較すると現行のサーベイランス(感染症週報:IDWR)と非常に高い相関を持つことが分かりました。
また本DBの報告は迅速診断を行った症例に限っており、サーベイランスは臨床症状の報告よりも診断では信憑性が高まっています。そして、タイプ(A,B型)やウイルス分離、症例の年齢性別、地域(市町村まで)をリアルタイムで集計しているユニークな情報源であります。
もちろん、この情報収集のやり方が正しいと決まった訳ではありません。絶えず本DBの運用方法が診療に有益であるかどうかを吟味しながら運営を続けております。
本Webサイトで表示されている内容は、これらの特徴を知った上で、ご利用下さい。
■ 有志医師から届いた本DB報告数とIDWRとの比較
ML-flu-DBとIDWRとの報告数の比較検討を行いました。こちらのページに詳細を示しました。ぜひご覧下さい。以下は2004-2005年の比較ですが、どの年も非常に高い相関を持っています。
■ 医師ならどなたでも参加できます
2009年の新型インフルエンザ発生で世間の感染症に対する懸念は一層高まりました。A/H1N1(2009)は季節性のインフルエンザと見なされるようになりましたが、今後も新しい感染症が現れることは間違いありません。感染症をコントロールするには、発生初期の対応が鍵を握る事は間違いありません。
迅速な情報周知という点では、このMLインフルエンザ流行前線情報データベースは優れたシステムです。しかし早期警戒ネットワークとしては、まだまだ有志の先生が足りません。
本プロジェクトの有志になってくださると、インフルエンザの情報に触れ絶えずインフルエンザでも早く見つけよう、という意識が高まるようです。本プロジェクトの本当の効能は、臨床医のインフルエンザに対する関心や警戒心を高め、そして知らせるといった行動を促したことでした。国や行政が何かをしてくれるまで待たずに、自ら行動できる臨床医家を増やしたことです。
本プロジェクトは、頼まれたり押しつけられたりするモノではありません。参加したとしてもノルマや制限が与えられる事もありません。国民にインフルエンザの関心を高め、流行を早く知らせたいと願う自主的な臨床医家のプロジェクトです。
同じ願いを持つ医師なら、どなたでも有志として参加していただけます。ぜひお気軽に以下のアドレス「西藤なるを」までメールをお寄せ下さい。
■ その他の特徴本DBは、他にも以下の点を工夫したり特徴を持っております。
「MyData」というサービスを実装しております。それは有志医師毎にアカウントを設けて、ご自身が診断されたインフルエンザの症例の集計結果をご覧になることができます。またエクセルで読み込めるデータとしてダウンロードが可能です。また、自院のインフルエンザ検出数を外来患者さんに閲覧してもらうことを目的としたWebページも準備できます。その他にも、有志の先生にとってインフルエンザ診療に直結する便利なユーティリティーを満載しています。プロジェクト有志となっていただいて、最もメリットがあるのは、この「MyData」というサービスだと思います。
■ 重要関連サイト
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